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とんこつQ&A

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今村夏子『とんこつQ&A』(講談社)

「群像」に掲載された4作を収録しています。それぞれ面白いので4作とも紹介します。

「とんこつQ&A」

中華料理店「とんこつ」で働き始めた主人公は、言えなかった「いらっしゃいませ」を、メモを読み上げることで克服する。

それからというもの、いらっしゃいませなどの挨拶、店の名前の由来、おすすめメニューなど、店内で発するあらゆる発話をメモに記入し、「とんこつQ&A」を作り上げる。メモをさっと取り出し、お客様からの言葉に応えるのだ。そこにもう一人、アルバイトの丘崎さんが加わって…。

冒頭の店名に関するあるあるネタを飲み込み、QとAが唐突に登場したり、メモを見なくては喋れない主人公を、それくらいはありえるかもな、と許容してページをめくったが最後、あれもこれもと詰め込まれ、最終的にはとんでもない地点まで連れて行かれる。設定の勝利。

奇抜というか、人を食ったようなというか、あまり聞き馴染みのないタイトルだった。それがどうだ、読み終えた後ではこのタイトルでしかあり得ない。

「嘘の道」

「与田正」といういじめられっ子が話題の中心にはなるものの、直接に登場する場面は少なく、彼の周りをぐるぐるとまわる噂と悪評で物語が進む。その噂自体が主人公の姉弟自身に襲いかかるのは何の因果か。

「良夫婦」

朗らかで、人の苦境にすぐ同情してしまう妻と、尻に敷かれているようでいざという時は頼りになる夫。古くなった家で過ごす二人はしかし、重大な過失を隠しながら生活している。妻の失敗を夫が隠し、今日も変わらず働き、眠る。穏やかな描写のまま終わるのがなかなか怖い。

「冷たい大根の煮物」

ああ、やはり。という結末ではあるし、主人公は客観的に見ても被害者だと思うのだが、一連の出来事はもはや主人公の一部になっていて、生活の役に立っている。主人公に悲しそうな素振りも描写もない。善悪ははっきり分かれてやってくるのではなく、分かち難く私たちの生活に染み付いていることを意識させられる。

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