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ビンダー8号 特集:宮崎駿
¥1,400
以下、版元より ククラス編集発行の同人誌『ビンダー』の第8号「特集:宮崎駿」です。 2023年11月発行、全268ページ、表紙画と挿画・郷治竜之介。 巻頭文 〔論考『君たちはどう生きるか』〕 6-11 紅茶泡海苔 宮崎駿と少女フェミニズム 12-16 河原 学 「写真」の不在、青サギの恋 18-22 志津史比古 フィクションと少年時代 24-27 舞風つむじ 波と飛行機 ――宮崎駿と「災害」を考える 28-32 ペシミ されど「地球儀」は回り続ける――『君たちはどう生きるか』と米津玄師 34-39 すぱんく the はにー 駿までの距離 40-50 てらまっと ジブリの知らない街、あるいはニュータウンの精霊たち 〔論考「宮崎駿」〕 52-63 渡邉大輔 宮﨑駿における「版画的なもの 」――岳父・大田耕士並びに触覚的想像力との関わり 64-99 志津史比古 われらの同時代人アシタカ 100-106 Murderous Ink 紅の豚――ファシズムを凍らせる想像力 108-116 安原まひろ 宮崎駿とあらかじめ失われた夏 ─武蔵野と多摩ニュータウンと感傷─ 118-127 河原 学 セル(画)論 第八回 宮﨑駿の中央線 128-130〔コラム〕河原 学 全生園と宮﨑駿 132-157 志津史比古 鈴木敏夫はいかにして宮崎駿とコンビを組むようになったか 158-168 noirse 陰謀論者の見た夢――治者としての宮崎駿 170-181 〔ルポ〕安原まひろ 「ネタ」ツーリズムとしてのジブリパーク 182-183 〔ルポ〕飛白 風の谷のビール 184-185〔マンガ〕かつしかけいた 三鷹⇨調布 ジブリ美術館以外無目的散歩 186-203 〔小説〕伊藤螺子 物語のようにふるさとは遠い 〔絵画〕 206-207 富田正宣 無題 〔連載〕 209-217 佐々木友輔 いま、個人映画をみるということ(六) 風景論以後の風景論を構想する――原將人『初国知所之天皇』と新海誠『すずめの戸締まり』の比較を手がかりとして 218-226 noirse 二一世紀映画論 第八回 フェイクとセルフの狭間で 227-244 Murderous Ink 可視光 第三回 残響とエコー 〔特別寄稿/小説〕 245-265 鈴木並木 素敵な仕事(もし手に入れられたなら) 266-267 [ 寄稿者一覧 ]
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世界をきちんとあじわうための本
¥1,870
『世界をきちんとあじわうための本』 企画 : ホモ・サピエンスの道具研究会 「世界をきちんとあじわうための本」と題されたこの本は、元々展覧会の記録集として作成された。 それが巡り巡って @on_reading のおふたりやホモ・サピエンスの道具研究会が原稿を加え、新装版としてわたしたちの手元にある。 そういった経緯から、ここにはさまざまなタイプの文章が混在する。さまざまな方法で、普段の生活のなかに世界が「ある」ということや、意識しないでやっていることをいまいちど点検し、気付き、あじわうことが試みられている。 たとえば、コンビニのシャキシャキなレタスへの違和感から思考を巡らせた次のページには鉄棒の写真。食べ物のこと考えたあとだから、「うわ、鉄の味しそう」とか、「レタスと同じで水滴が垂れてて冷たそう」「レタスよりずっと硬い」とか、考えてしまう。そして、さっきの文章だと目的やら道具やら言ってたな、鉄棒はどういう扱いになるだろう…。 鉄棒は公園や学校にいつもあって、当たり前に見ているものだけれど、ある視点を教えてもらって見つめなおせば、このとおり別様に変化する。息をしたり、靴を履いたり。あるいは、「残ってしまう」という世界の不思議な性質に驚いてみたり。そんなことが、読んだあとには出来るかもしれない。 ひとつ、おすすめの読み方を提案しましょう。 まず、本に出てくる写真だけを見てみます。綺麗に写されてはいますが、どこにでもあるものを写したものが多く、「なんだこの本は、つまらないものばかり写しているな」と感じるかもしれません。 つぎに、冒頭の「私たちは、毎日、毎日、何をしているのだろう?」という問いを頭の中にうかべて、通読してみます。たぶん、当たり前の風景に思えた写真たちが、ぜんぜん違って見えるはずです。 そうしたらきっと、写真だけでなくて、世界をきちんと、あじわう準備ができているはず。みつめるでも、かんがえるでも、かんじるでも、しるでもなく、あじわう。それは、わかることも、わからないことも含めて、吟味する態度を示しているものなのではないでしょうか。
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新たな距離 言語表現を酷使する(ための)レイアウト
¥3,740
弊店でも「いぬのせなか座」の発行する書籍は扱っておりますが、このたび主宰の山本浩貴さんの単著がフィルムアート社から発刊。たのしみでしかありません。 以下、版元より 私を書き留め、私を並べる。世界が組み換わる。 次世代の俊英・山本浩貴(いぬのせなか座)の待望の初単著、三部作で刊行開始。 小説、批評、詩歌、デザイン、美術、写真、映画、上演……多種多様なジャンルを行き来しながら 言語表現の技術や意義を再定義し、「新しい制作」の、さらには「この私の生」の可能性を拓く、鮮烈な思考と実践と実験の書。 本書『新たな距離──言語表現を酷使する(ための)レイアウト』は、三部作のうちの第一作目として編まれ、以後近々に続刊予定。 初単著が三部作という前代未聞のデビューに刮目せよ。
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コミティア魂
¥2,200
SOLD OUT
そこまで漫画を扱っていない弊店ですら文フリ、コミケに続いて噂を聞くようになったコミティア。私も今年は行ってみようかしら… 以下、版元より 「魂と魂が握手するような出会い」を求めて—— オリジナル作品のみを扱った同人誌即売会コミティアは、どのように生まれ、どこへ向かおうとしているのか? あらゐけいいち描き下ろし漫画収録 オリジナル作品のみを扱った同人誌即売会「コミティア」のイベントカタログ『ティアズマガジン』誌上にて連載された、漫画と同人誌の歴史をたどる証言集「コミティア魂」。コミティアを軸に、イベントが始まった1984年から2024年現在までの日本の同人誌即売会、漫画業界、インディペンデントカルチャーの歴史を紐解く好評連載が待望の書籍化!
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私が諸島である カリブ海思想入門
¥2,530
SOLD OUT
以下、版元より 「なぜハイデガーやラカンでなければならない? 僕たちにだって思想や理論はあるんだ」 カリブ海思想について新たな見取り図をえがく初の本格的な入門書。
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高校生と考える 人生の進路相談
¥1,980
以下、版元より 心理学、人類学、言語学、精神医学、科学、物理学など あらゆる分野の第一人者である講師陣18名が伝える 今を生きる高校生への「人生のメッセージ」 「自分とは何か」「他者に寄り添うには」「どう生きていくか」......。 先の見えない時代を生きる高校生たちの悩みは広く、深い。 そんな彼らに向けて、人生を進むヒントとなる言葉を伝えた 大学教授18名の授業が収録された人気シリーズ最新刊! 子どもはもちろん、大人にとっても自分の道を見つめ直すきっかけになる一冊です。 「自分らしさに内容はありません。 いわば、何も入っていないバケツみたいなものです。」 磯野真穂(人類学者) 「無意識というのはただの悪者じゃなくて、 そのひとの根底でずっと響いている物語みたいなものです。」 東畑開人(臨床心理学者) (目次) 第一章 世界から自分を考える 磯野真穂「自分らしさとは何か?」 ウスビサコ「これからの世界で生きるために」 渡辺靖「アメリカ研究者による進路相談」 第二章 文化を読み解く トミヤマユキコ「少女漫画とルッキズム」 尾崎真理子「文化とは、文学とは何か?」 里見龍樹「旅する哲学」 第三章 角度をつけて社会を見る AKI INOMATA「生きものと共につくるアート」 神里達博「科学技術を哲学しよう」 松浦壮「時間とはなんだろう?」 第四章 言葉と生きる 今井むつみ「言葉を使えるとはどういうことか」 都甲幸治「好きなことを仕事にするということ」 山本浩貴「生のアトリエ」 第五章 過去を通して人間を知る 藤野裕子「過去にタイムスリップして」 香川檀「自分の記憶を伝える芸術とは」 海部陽介「三万八千年前の祖先たちはどうやって未来を切り拓いたのか」 第六章 他者とつながる 松本卓也「イデオロギーと心の病気」 川瀬慈「他者を理解するということ」 東畑開人「心見る仕事」
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ゲンロン16
¥2,530
以下、版元より 【目次】 【小特集】ゲンロンが見たウクライナ [論考]東浩紀|ウクライナと新しい戦時下 上田洋子|戦争はどこに「写る」のか──ボリス・ミハイロフとハルキウ派 [取材]上田洋子|「戦争が始まった朝はどうすればいいのかわからなかった」キーウ市民に聞く [インタビュー]イリヤ・フルジャノフスキー 聞き手=東浩紀+上田洋子|ユダヤとロシアのあいだで──バービン・ヤルの虐殺とソ連という地獄 ———————————— [座談会]夏目房之介+大井昌和+さやわか|マンガの奥義は現場にあり──ジャズ、八卦掌、戦後日本 [エッセイ]大澤聡|ふたつの庭、あるいは碁 [論考]菊間晴子|「見せ消ち」の生を歩む──書き直しの作家としての大江健三郎 須藤輝彦|あいまいなチェコの小説家──ミラン・クンデラのコンテクスト※再掲載 [ゲンロンの目]新川帆立|エンタメ作家の背骨 ———————————— [座談会]加藤文元+川上量生+東浩紀|訂正する真理──数学、哲学、エンジニアリング ———————————— [連載]ユク・ホイ|永遠平和とふたつの普遍的なものの概念 惑星的なものにかんする覚書 第3回 訳=伊勢康平 [連載]イ・アレックス・テックァン 訳=鍵谷怜|レヴィ=ストロースとサイバネティックス 理論と冷戦 第6回 [連載]石田英敬|1960年代の「想像力」 飛び魚と毒薬 第6回 [連載]田中功起|内省と制度批判 制度を内側から変えること 11月30日から3月12日 日付のあるノート、もしくは日記のようなもの 第17回 ———————————— [コラム]山森みか|イスラエルの日常、ときどき非日常 #11 具体性を伴った共存に向けて [コラム]辻田真佐憲|国威発揚の回顧と展望 #6 「ゆるふわ」ポストも油断できない [コラム]福冨渉|タイ現代文学ノート #9 「革命」の憧憬 ———————————— [コラムマンガ]まつい|島暮らしのザラシ 寄稿者一覧 English Contents and Abstracts
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エドワード・サイード ある批評家の残響
¥1,870
以下、版元より 文学、音楽、パレスチナ問題など分野横断的に論じた批評家、エドワード・サイード。ポストコロニアル批評の先駆者として『オリエンタリズム』などの著作を残した。イスラエルによるガザへの軍事攻撃が激化。いまサイードの著作が読みなおされている。彼にとって、批評とはどのような営為だったのか? 没後20年をむかえた今、その思考の軌跡をたどりつつ、現代社会における批評の意義を問う。
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新記号論
¥3,080
以下、版元より ゲンロンカフェ発 伝説の白熱講義を完全収録! 脳とメディアが出会うとき——記号論は新たに生まれ変わる! クロマニョン人とリュミエール兄弟、スピノザとニューロサイエンス、フロイトとiPadが軽やかに結びつく、超時代・超領域の連続講義。やがて聴衆は、人文学と認知科学が団結し、ファシズムに立ち向かう瞬間を目の当たりにする。われわれの認知を、コミュニケーションを、政治行動を、テクノロジーはどのように規定しているのか。インターフェイスに囲まれて生きる現代人の必携・必読の書。
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インタビュー大全
¥2,200
SOLD OUT
以下、版元より 雑誌やWebの記事などさまざまなメディアで長年インタビュアーとして活躍してきた著者が、これまで約2000人に行ったインタビューから得たデータを分析。「人から自然に話を引き出す」ために必須なストラテジー(戦略)を体系化した最強の〈インタビュー教本〉の登場です。 本書は多数のイラストとチャート図を使い、読みやすく、わかりやすいページ構成になっています。また「インタビュー」だけでなく、広く「コミュニケーション」のテキストとしても使えるよう“練習問題”を各章に用意しました。コラム「インタビュー裏話」も添えて、インタビューにまつわる理論と実践と学習のすべてが詰まった一冊です。
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IMONを創る/いがらしみきお
¥1,980
以下、版元より 80年代末から90年代初頭にかけて、漫画家・いがらしみきお氏はアスキー(現・角川アスキー総研)のパソコン情報誌「EYE・COM」誌上で『IMONを創る』という長篇エッセイを連載していました。当時話題を呼んだOS構築の入門書『TRONを創る』(坂村健著)をもじったタイトルを持つこの連載のコンセプトは、日本語によく似たプログラミング言語による、人間のためのOS=行動と思考の原則である「IMON」(=Itsudemo Motto Omoshiroku Naitonaいつでも・もっと・おもしろく・ないとなァ)の構築と、それを読者へインストールする試みというものでした。 つまり、まだそれが「パソ通」と呼ばれていた時代に、いち早く原初的なインターネット通信とパソコンを生活と思考の技術として導入していた著者が、来たるネット社会・SNS社会を予見し、「インターネットの爆発的普及によって個人の生きる感覚の変化が急速に進む世界で、人間はどう生きていくべきなのか」を記述した(『ぼのぼの』、『I【アイ】』などいがらし氏の代表作を貫く)人間哲学というのがこの連載のもう一つの姿でした。連載は92年に書籍化されたものの、その内容が当時としてはあまりに先を行きすぎていたためかまもなく絶版となり、長らく忘れられた書籍となっていました。 しかしその刊行から30年後の現在、一人一台スマートフォンを持っているのが当たり前のSNS社会の風景は、『IMONを創る』でいがらしみきお氏が予言していた世界像そのものです。驚くべきはその予見の精確さだけではなく、そこで提唱された「IMON」というOSのアイデアが、AI産業の隆盛により人間というものが急速に相対化されつつある現代において、それでも人間が人間として、いつでも・もっと・おもしろく生きていくために、より刺激的かつ有効なものとなっていることです。 この前世紀最大の奇書であり、精確な思考が現実の未来を射抜いた驚異の予言書であり、人間世界の「ぜんぶの解説」とも言うべき書物を、著者自身の新しいあとがきと、本書の熱読者である作家・乗代雄介氏による解説を付し、復刊します。
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さらば、ベイルート ジョスリーンは何と闘ったのか/四方田犬彦
¥2,992
さらば、ベイルート ジョスリーンは何と闘ったのか/四方田犬彦 中東戦争を撮り続けた知られざる巨匠ジョスリーン・サアブ。世界史的悲劇が凝縮する土地と時代を生きた彼女の生涯を通じて、自由を希求する人間の輝きを描く感動のノンフィクション。 レバノンの名家に生まれ、 パリで客死したある女性映画作家の生涯。 驚異と感動のノンフィクション
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庭のかたちが生まれるとき
¥2,860
庭のかたちが生まれるとき 「「明日からお邪魔させてください」ーそう口走ってしまったぼくはすでに後悔しはじめていた」「とにかく、現場で起こっていることを見ることだ」 庭を見る。深く、ではなく、浅く。 著者は京都・福知山観音寺で作庭現場のフィールドワークを行い、庭師の生態を観察し、庭のレシピを書き起こそうとします。 著者の態度として面白いなと思ったのは、謎を詳に明らかにしても、全てが見えるとは思っていないところでした。「見えなかったものが見えるようになり、石と石のあいだに躍動的な関係やぎりぎりの緊張関係があることに気づいたり(中略)するかもしれない。しかし反対に、もしかするとこれまで見えていたものが背景に退いてしまったり、ただ楽しんでいたものが楽しめなくなったり」するかもしれないといいます。庭園を眺め歩いている時に、視点が変わると石や橋が見え隠れする体験のようでもありますね。 また、著者はジル・クレマン『動いている庭』の翻訳や『ライティングの哲学』の共著者としても知られています。合わせて読んでいただきたいので、仕入れておきます! ほかにも合わせて読むと面白そうな本が弊店にもありましたので、棚を制作中です。
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声の地層
¥2,310
声の地層 伝える人と耳を澄ます人をつなぐ、語り継ぎの文学 震災、パンデミック、戦争、自然災害…。多くを失い身一つになっても、集えば人は語りだす。痛みの記憶を語る人と聞く人の間に生まれた「無名の私たち」の記録。絵画多数掲載。 武田砂鉄さん、和合亮一さん、絶賛! 目次 はじめに——語らいの場へようこそ 第1章 おばあさんと旅人と死んだ人 第2章 霧が出れば語れる 第3章 今日という日には 第4章 ぬるま湯から息つぎ 第5章 名のない花を呼ぶ 第6章 送りの岸にて 第7章 斧の手太郎 第8章 平らな石を抱く 第9章 やまのおおじゃくぬけ 第10章 特別な日 第11章 ハルくんと散歩 第12章 しまわれた戦争 第13章 ハコベラ同盟 第14章 あたらしい地面 第15章 九〇年のバトン 声と歩く——あとがきにかえて
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あなたのルーツを教えて下さい
¥1,980
SOLD OUT
安田菜津紀『あなたのルーツを教えて下さい』 入管問題、ヘイトデモ……日本社会に存在する「分断」や、共に生きる人々の「ルーツ」に焦点をあてた15の対話 フォトジャーナリスト・安田菜津紀が一人ひとりのアイデンティティと向き合い、それぞれのルーツについてたどった渾身のルポ。 朝日新聞社の言論サイト「論座」にて連載中のエピソードから書籍化。今もなお取材を続ける中で、今回、あらたに書き下ろしを2本収録。2021年3月、名古屋入管内で亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん。なぜ彼女は命を奪われなければならなかったのか。彼女が生きてきた証をたどるために故郷スリランカでの取材を敢行。さらに、ヘイトに抗い、「ともに」を掲げ続けてきた川崎・桜本にある「ふれあい館」の取材から、差別について問う。
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【増補新装版】障害者殺しの思想
¥2,420
SOLD OUT
横田弘『【増補新装版】障害者殺しの思想』(現代書館) 1970年代の障害者運動を牽引し、健全者社会に対して「否定されるいのち」から鮮烈な批判を繰り広げた日本脳性マヒ者協会青い芝の会の行動綱領を起草、思想的支柱であった故・横田弘氏の原点的書の復刊。 当事者としての覚醒を呼びかけた青い芝の会の「行動綱領」は、脳性マヒ者のみならず多くの障害者、学生運動・労働運動の担い手たちに強烈な印象を与え、浸透した。そのラディカルで端正な言葉は、詩人でありかつ仏教徒である横田氏でなければ書けなかったものと思われる。 1970年に起きた母親による障害児殺し事件とその母親に対する減刑嘆願運動への神奈川青い芝の会の告発は、日本の障害権利運動の萌芽として、障害者運動のルポや研究書で言及されている。その多くが横塚晃一氏の『母よ!殺すな』(2007年、生活書院より復刊)に依拠したものだが、本書の復刊により、思想・理論の横田氏と、組織力・行動力の横塚氏の二人の視点から青い芝の運動を再読することが可能となった。 本書では、障害者殺し事件の他、72年優生保護法改悪反対闘争、太田典礼の「安楽死」思想の批判、障害者の歴史、青い芝の会「行動綱領」と青い芝の「過激」な闘争(川崎バス闘争、神奈川リハセンターの胎児チェック反対闘争、養護学校義務化阻止闘争)等が網羅され、青い芝の会が最も先鋭的に運動していた時代の貴重な記録である。と同時に、横田氏が問い続けた優生思想、医学モデル、パターナリズムが今なお根強く残っていることから、今こそ著者の思想の源流を辿るべきと思う。(猫) 大好評重版出来! 【目次】 第一章 障害者殺しの事実 一 障害者は何故殺されねばならないのか 二 障害者殺しの経過 三 マスコミの「犯罪性」 四 障害者を殺そうとするもの 五 周りが寄ってたかって殺した 第二章 障害者殺しの思想 一 殺されたほうが幸せか 二 本来あってはならない存在か 三 障害者殺しの思想 四 減刑を許すな 五 CP者の生命を守るために正当な裁判を 六 福祉従事者との話し合い 第三章「優生保護法」とは何か 一 「優生保護法」とは何か 二 遺伝相談センターについて 三 優生保護法改正阻止闘争の記録 四 障害者は健全者から切り捨てられる 第四章 障害者はどのように生きたか 一 障害者の歴史 二 障害者はどのように生きたか 三 岩手の空を想う 四 流しびな 第五章 われらかく行動する 一 われらが生きるために 二 「福祉の街づくり」について 三 「リハビリ」という名の隔離 四 七沢リハビリテーションセンター交渉の記録 五 車イスがバスに乗れなくなった日 六 養護学校義務化阻止闘争 七 2・9神奈川県知事交渉記録 第六章 カナダのCP者たち 一 車イス、カナダヘ 二 サイモン・フレーザー大学での対話 三 ここでも障害者差別が 四 どこの世界でも抹殺される障害者 五 カナダの脳性マヒ者ノーマン・クンツ氏との対話 〔増補新装版〕編集部注 あとがき 復刊にあたって 解説/立岩真也 資料 横田弘年譜
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障害と文学:「しののめ」から「青い芝の会」へ
¥2,420
SOLD OUT
荒井裕樹『障害と文学:「しののめ」から「青い芝の会」へ』(現代書館) 障害文芸誌『しののめ』の主宰者である花田春兆(俳人、85歳)、「青い芝の会」行動綱領を起草し、鮮烈な健常者文明批判を展開した横田弘(詩人、77歳)の2人を中心に、障害者が展開した文学活動の歴史を掘り起こし、「障害」とは何かを問い直す。 [著者紹介・編集担当者より] 障害者が描かれた文学は多くあるが、障害者の文学活動を障害の視点から読み直した研究は初めてではないか。ハンセン病文学と障害文学を両輪で研究する若き研究者による、日本の障害者運動に特徴的な「綴る文化」に関する意欲的論考。 【目次】 序 章 一、はじめに 二、障害の文化 三、綴り合う仲間たち 四、本書の構成 第一部 「綴る文化」の戦後史 第一章 文学が紡ぐネットワーク 一、はじめに 二、二つの出自−「光明学校」と「療養文芸」 三、「しののめ」の広がり 四、「しののめ」人脈の発展 五、結びにかえて 第二章 反抗する「人間」たち 一、はじめに 二、「しののめ」の同人層 三、「親の会」と「血の営み」 四、「恩愛」への反抗 五、「自分」の芽生え 六、〈性〉という「秘密」 七、反抗する「人間」たち 八、結びにかえて 第二部 「いのち」の価値の語り方 第三章 「安楽死」を語るのは誰の言葉か 一、はじめに 二、「安楽死」を問う声は誰のものか 三、「安楽死」は「本人の幸福」 四、家族が〈自立〉を可視化する 五、私的領域としての〈生命〉 六、結びにかえて 第四章 文芸同人誌『しののめ』に見る生命観の変遷 一、はじめに 二、 一九五〇年代の議論−他者に配慮し得る自己 三、 一九六〇年代の議論−「安楽死」は主体的行為? 四、 一九七〇年代の議論−「優生」への挑戦 五、結びにかえて 第三部 横田弘の詩と思想 第五章〈母〉なる障壁横田弘の詩と思想(前編) 一、はじめに 二、高度経済成長と閉塞する家族 三、横田弘のあゆみ 四、屈折する母恋 五、「極限の自己表現」がぶつかるとき 六、結びにかえて 第六章 告発の詩学−横田弘の詩と思想(後編) 一、はじめに 二、問題の所在 三、「青い芝」の主張 四、横田弘詩論(一) 五、横田弘詩論(二) 六、 結びにかえて 文献一覧 初出一覧 あとがき−謝辞にかえて
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凜として灯る
¥1,980
SOLD OUT
荒井裕樹『凜として灯る』(現代書館) 第15回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞受賞後最初の書き下ろし作品! その人は『モナ・リザ』にスプレーを噴射した。 理由を知るには人生を語る覚悟がいる。 1974年4月20日、東京国立博物館で開催された『モナ・リザ展』一般公開初日。「人類の至宝」と称されるこの絵画に、一人の女性が赤いスプレー塗料を噴射した。女性の名前は米津知子。当時25歳。「女性解放」を掲げたウーマン・リブの運動家だった。なぜ、彼女はこのような行動に及んだのか。女として、障害者として、差別の被害と加害の狭間を彷徨いながら、その苦しみを「わたしごと」として生きるひとりの、輝きの足跡。 【著者紹介】 荒井裕樹(あらい・ゆうき) 1980年、東京都生まれ。 専門は障害者文化論、日本近現代文学。 東京大学大学院人文社会系研究科修了。 博士(文学)。二松学舎大学文学部准教授。 障害や病気とともに生きる人たちの自己表現活動をテーマに研究・執筆を続ける。 著書に『隔離の文学──ハンセン病療養所の自己表現史』(書肆アルス)、『生きていく絵──アートが人を〈癒す〉とき』(亜紀書房)、『差別されてる自覚はあるか──横田弘と青い芝の会「行動綱領」』(現代書館)、『障害者差別を問いなおす』(筑摩書房)、『車椅子の横に立つ人──障害から見つめる「生きにくさ」』(青土社)、『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)などがある。
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われらはすでに共にある——反トランス差別ブックレット
¥1,100
反トランス差別ブックレット編集部(青本柚紀、高島鈴、水上文)編『われらはすでに共にある——反トランス差別ブックレット』(現代書館) 2022年11月に刊行された反トランス差別ZINE『われらはすでに共にある』の増補版。ZINEの内容はほとんどそのまま、新たにエッセイを3本、ブックガイドを4本追加。 日に日に苛烈さを増すトランスジェンダーに対する差別・排除言説。現実に即さないトランスジェンダー像が広められ、恐怖と不安が煽られる。本書は、そうした現状に抵抗を示すべく刊行された。複雑で多様な個々人の声、現状に対する抵抗言説を、読みやすい長さで多数収録。巻末には映画・ブックガイドを掲載。トランスヘイトの嵐に抗うために、まず手に取りたい1冊。 〈われらはすでに共にある。共にある未来のために、共に生き続けるために、あなたは決してひとりではないのだと言うために、本書は作られている。他ならないあなたに届くことを、私は祈っている。〉(水上文「はじめに」より) 【目次】 ☆=増補分 はじめに 水上文 [エッセイ] ・三木那由他「くだらない話がしたい」 ・ただの沼「べつの言葉で」 ・青本柚紀「クィアな自認の時間性??あなたにそれが届くまで」 ・山中千瀬「言葉がほしい」 ・さとう渓「トランスジェンダーは難しくない」 ・水上文「シスジェンダーとは何か」 ・かがみ「「キラキラしたトランスジェンダリズム」ってなんですか?」 ・福永玄弥「わたし(たち)は忘れない」 ・高島鈴「その声には応答しない」 ・近藤銀河「シスターズへ」 ・堀田季何「メモ・ノワール」 ・榎本櫻湖「声について」 ・山内尚「熊で鹿で兎でそして」 ・呉樹直己「セックストイと自炊飯」 ・清水晶子「背を向けて、彼方を見つめて、向き合って」 ・岩川ありさ「雑踏の中でも見つけられる」 ☆釘宮もみじ「身体と知を売ることについて」 ☆吉野靫「ご機嫌いかがですか」 ☆周司あきら「共犯者」 ・児玉美月「世界のトランスジェンダー映画5選」 [共にあるためのブックガイド] ・水上文「私たちの問題??「トランスジェンダー問題」を捉え直す」 (ショーン・フェイ著/高井ゆと里訳『トランスジェンダー問題』) ・中村香住「トランスジェンダーとフェミニズムの共闘点」 (田中玲『トランスジェンダー・フェミニズム』) ・近藤銀河「ハンマーの共鳴音を探る」 (橋迫瑞穂『妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ』、李琴峰『生を祝う』) ・青本柚紀「割り当てられた性を出てゆく経験としてのトランス」 (エリス・ヤング著/上田勢子訳『ノンバイナリーがわかる本』) ☆青本柚紀「Aセクシュアル・Aロマンティック・Aジェンダー??こうしてあなたたちは疎外の夜をつくる」 (夜のそら「Aセク情報室」) ☆高島鈴「“自然”を語る新しい言葉」 (ジュリア・セラーノ 著/矢部文訳『ウィッピング・ガール』) ☆水上文「奪い返し、問い返す??「性同一性」をめぐって」 (針間克己『性別違和・性別不合へ』、五月あかり・周司あきら『埋没した世界』) ☆周司あきら「トランスジェンダーの仲間と再会する」 (虎井まさ衛編著『語り継ぐトランスジェンダー史』)
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ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ
¥1,980
谷頭和希『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』 以下、版元より ブックオフから考える。 社会と都市と文化の「つながり」を。 日本全国に約800店舗を構えるブックオフは、多くの人にとって日常生活に溶け込んだ存在になっている。しかしこのような「当たり前」の存在になるまでは、ブックオフをめぐりさまざまな議論が繰り広げられてきた。あるときは出版業界の革命家として、またあるときは破壊者として、そしてまたあるときは新たなサブカル文化の創造者として……。 本書は、ブックオフが誕生した1990年代からのさまざまな「ブックオフ論」を整理し、実際に多くの店舗を観察して、「なんとなく性」という切り口から、なぜ人はブックオフに引き寄せられるのか、そして現代社会でどのような役割を果たしているのかを縦横無尽に考え尽くす。 ブックオフはどう語られてきたのか。またその語りに潜むノスタルジーとは。 チェーン店であるブックオフが都市にもたらしたある種の「豊かさ」とは。 ブックオフで「偶然」出合う本の面白さとは。 ブックオフから生まれた音楽、カルチャーとは。なぜアーティストはブックオフからの影響を語るのか。 ブックオフが生み出す公共性とは。「文化のインフラ」の内実とは何か。 チェーンストア論やテーマパーク論で注目を集める新進気鋭の著者が、出版史、都市論、建築論、社会学、政治学、路上観察学など多様な分野の知見を駆使して書き上げたいままでにないブックオフ文化論。 目次 プロローグ——ブックオフで神隠しに遭う 序 章 いまこそ、ブックオフを考えよう 第1章 「かたる」——ブックオフはどう語られてきたのか 第2章 「めぐる」——ブックオフから都市を眺めて 第3章 「あそぶ」——ブックオフは原っぱだ! 第4章 「つくる」——ブックオフ文化人たちのこと 終 章 「つながる」——ブックオフが生み出す「公共性」とは 参考文献・ウェブサイト 初出一覧 あとがき
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近代出版研究 第2号 特集「雑著・雑本・ミセレイニアス」
¥2,200
近代出版研究 第2号 特集「雑著・雑本・ミセレイニアス」 以下、版元より ベストセラー『調べる技術』の小林昌樹が編集長を務める日本近代書誌学、近代出版史成立を志す年刊研究誌。 第2号の特集は「雑著・雑本・ミセレイニアス」。巻頭は作家・稲生平太郎でもある横山茂雄(英文学)のロングインタビュー。ミステリ/幻想文学/UFO超心理とサークルを掛け持ちした京大生時代を中心に、抱腹絶倒の古本収集話をなんと4万字! 「小さい問題の登録」を謳う本誌、今回も内容見本、版元営業、コンビニ本、大正グラフ雑誌、新聞内報、新聞縦覧所、雑誌屋……これまでほとんど論じられることの無かった近代出版史の様々なテーマを取り上げます。リニューアルが大きな話題となっている石川県立図書館の考え方と背景を、館長自ら記したエッセイもあります。 佐藤卓己(メディア史)・稲岡勝(近代出版史)・田村俊作(図書館学)といった斯界の重鎮から、『地下出版のメディア史』(慶應義塾大学出版会、2022)が話題の大尾侑子、民俗学の菊地暁・飯倉義之・志村真幸、近代神道史の木村悠之介ら気鋭の研究者、神保町のオタ、松_貴之、平林緑萌ら在野研究者・出版人までユニークな執筆陣が揃いました! 目次 横山茂雄ロングインタビュー——川島昭夫・吉永進一らとの交友、そして古本収集話 横山茂雄・志村真幸・神保町のオタ・菊地暁・小林昌樹・森洋介・河原努 「新聞内報」研究の必要性 佐藤卓己 特集に寄せて、雑本とは何か——図書分類法を援用して 小林昌樹 オカルトを買っておうちに帰ろう——「コンビニオカルト本」の私的観察史 飯倉義之 雑本ガイドとしての『民俗学入門』、あるいは私の雑本三昧 菊地暁 明治期における「内容見本」の出現──型の成立と名称の変遷をたどる 大尾侑子 雑本・雑書の視点から見た『明治文化全集』と帝国図書館の蔵書 鈴木宏宗 版元営業はどのような仕事か 平林緑萌 魔窟的新聞縦覧所の登場と退場、碁会所を添えて 松_貴之 『ノーツ・アンド・クエリーズ』と南方熊楠——アマチュア学者たちの国際投書空間 志村真幸 日本初の健康雑誌だった『健康之友』(大正十三年五月創刊)について 神保町のオタ 大正初期グラフ雑誌カタログ—忘れられた第一次ブーム 藤元直樹 雑誌屋考—地本、小新聞と絵双紙屋 稲岡勝 『昭和発禁年表』編者・福岡井吉とは誰か 鈴木宏宗 出版に託された“一つの神道”という夢——会通社の社史が映す近代神道 木村悠之介 お役所メディアを探せ!——官報類似出版物の省庁・地方官庁への広がりと、その利用可能性を考える 藤元直樹 知的活動の場としての図書館——石川県立図書館の施設・サービス・展示とイベント 田村俊作 書評 『近代蔵書印譜』第六編 鈴木宏宗 著者 近代出版研究所 発売日 2023年4月7日 ページ数 288 ページ 定価 2,000円(+税) 判型 A5判並製 装幀・造本 藤巻亮一 ISBN 978-4-7744-0786-9
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応援の人類学
¥3,740
丹羽典生編著『応援の人類学』 以下、版元より 紹介 大学応援団の変遷、プロ野球の私設応援団の実態、伝統芸能とアイドルに熱狂する忘我現象などをフィールドワークに基づいて分析し、応援する人とされる人の世界を考察する。応援文化を多角的に描いて、「他者によって自分の存在を確認する行為」を検証する。 解説 ひいきのプロ野球チームを熱烈に応援して勝敗に一喜一憂し、アイドルを追っかけてオタクの生活に浸る。応援団のリードに手拍子を合わせる。応援団としてファンを統制する。 他者を激励して成功を自分のものとし、失敗を自分の責任のように背負い込む応援するという行為を、どういう心性が支えていて、生活にどのように位置付けているのだろうか。大学応援団の実態や、スポーツと芸能の現場——特にプロ野球の私設応援団と、親衛隊からヲタ芸まで——をフィールドワークに基づいて分析し、選手・演じ手と観客との関係を考察する。 大学応援団の歴史や因習に縛られた上下関係、「男の世界」に女性が入り込んで生じるジェンダー問題、伝統校の新入生へのイニシエーション行為、それらが時代とともに変貌するさまを解明する。 また、プロ野球の私設応援団が引き起こした事件と無秩序の実態、その後の統制と管理、トライアスロンなどの参加型スポーツイベントの地域住民と参加者の交流、さらには伝統芸能とアイドルに熱狂する忘我現象とは何か、にも迫る。 応援文化を多角的に描くことで、「他者によって自分の存在を確認する応援という行為」を照らし出す。 目次 序 章 野次、喝采そして応援——応援の人類学的研究に向けて 丹羽典生 1 応援とは 2 応援へのアプローチ——スポーツと芸能を中心に 3 応援という研究領域の開拓に向けて 第1章 共感と感情的高揚からみる応援・支援——キリバス人・バナバ人の歌と踊りの事例に基づいて 風間計博 1 集団内の「感情的結合」 2 共感と他者理解の人類学 3 キリバス・ダンスが生み出す一体感 4 バナバ人の歌劇が喚起する共感 第1部 応援する組織——大学応援団を中心に 第2章 日本の大学応援団の原型——その変化と組織秩序が示唆する論点を考える 丹羽典生 1 応援団の原型と大衆化 2 二〇〇〇年代の応援団への民族誌的接近——関西地区の国公立大学の事例を中心に 3 原型の創出とその変化 第3章 日本の大学応援団での女性応援部門の創設と展開——神戸大学応援団を主な事例として 吉田佳世 1 大学応援団とは 2 女性応援部門創設以前——応援に参加しない女性部員 3 バトンによる女性応援の登場 4 三部制の確立——一九八〇年代 5 女性部員の役割とその変化 第4章 大学応援団の吹奏楽——関西学院大学応援団総部吹奏楽部の事例を中心に 戸田直夫 1 関西学院大学での現在の応援形態の確立 2 応援活動の分析 3 吹奏楽部としての活動 4 応援と演奏のはざま——音楽的要素の比較分析 第5章 伝統校という歴史空間を構築する応援団——岩手県立盛岡第一高等学校の事例から 瀬戸邦弘 1 バンカラ高校と応援団 2 盛岡一高における大運動会 3 ドラマトゥルギーによる通過儀礼 第6章 時代を映す鏡としての応援団——ある戦後新設高校の事例から 小河久志 1 三高応援団 2 応援団の変化 3 変化をもたらした外的要因 第2部 応援する人/される人の関係——スポーツと芸能の場から 第7章 集合的応援での統制と管理——日本のプロ野球私設応援団の管理をめぐる変遷から 高橋豪仁 1 観客の逸脱行動 2 集合的応援行動による観客の統制 3 私設応援団の管理 第8章 バンクーバー暴動とは何だったのか——北米プロスポーツリーグのファンダムをめぐって 立川陽仁 1 北米のプロスポーツリーグのファンダムとは 2 バンクーバー暴動の実際 3 誰が暴れたのか 第9章 応援に表象される参加型スポーツイベントの定着化——長距離トライアスロン大会を例に 山田 亨 1 スポーツを消費する——観戦型スポーツと参加型スポーツ 2 参加型スポーツの華やかさと非日常性 3 大会誘致時に着目した応援のかたち 4 応援が示す大会の定着化 第10章 演じる見物の諸相——芸能と祭における見物と演者をめぐって 笹原亮二 1 違和感の在りか 2 能と見物 3 花祭と見物 4 見物の悪態と褒め詞 5 民俗芸能と見物 6 演じる見物 7 見物と演者の依存関係 第11章 アイドルを声援することの系譜学——親衛隊からヲタ芸まで 難波功士 1 一九七〇—八〇年代の女性アイドルと親衛隊 2 アイドル冬の時代と応援スタイルの変化 3 ヲタ芸の誕生とアイドルの変容 あとがき 丹羽典生
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落語と小説の近代 文学で「人情」を描く
¥3,080
大橋 崇行『落語と小説の近代 文学で「人情」を描く』 以下、版元より 紹介 三遊亭円朝の「怪談 牡丹灯籠」「怪談乳房榎」などから、明治期の物語の様相や「人情」の語られ方を読み解く。そこから小説が落語に翻案されるプロセス、物語がメディアを越境する諸相を分析し、日本近代文学研究、アダプテーション研究の新たな地平を示す。 解説 江戸期から明治期にかけて、大衆芸能である落語は小説にどのような影響を与えたのか。落語は西洋近代とどのように出会い、どのように向き合ったのか。 三遊亭円朝の「怪談 牡丹灯籠」「怪談乳房榎」「真景累ヶ淵」「錦の舞衣」のほか、三遊亭円遊、快楽亭ブラック、談洲楼燕枝など、同時代に活躍した噺家による落語も議論の俎上に載せて、明治期の物語の様相や「人情」の語られ方を丁寧に読み解いていく。 これらの議論を通じて、言文一致をめぐる問題、坪内逍遥の「人情」論を再考するとともに、小説が落語に翻案されるプロセス、物語が小説・落語・講談などのメディアを越境する諸相を分析し、日本近代文学研究、アダプテーション研究の新たな地平を示す。 目次 序 章 落語の近代——アダプテーションの視点から考える 1 本書の目的と初代三遊亭円朝についての研究状況 2 落語と〈近代〉 3 アダプテーションの理論とテクスト 4 アダプテーションの、その先へ 5 本書の構成 第1部 人情噺と怪談噺のあいだ 第1章 「人情」を語る怪談——三遊亭円朝「怪談 牡丹灯籠」 1 人情噺としての「牡丹灯籠」 2 円朝の談話における「人情」 3 語る「人情」、演じる「人情」 4 坪内逍遥の「人情」論と人情噺の関係 5 小説表現への接続 第2章 「幽霊」と「神経病」——三遊亭円朝「真景累ヶ淵」 1 「幽霊」と「神経病」 2 「神経病」言説の流行 3 「真景」「真情」としての「執念」 第3章 「見えがたきもの」を見えしむる——三遊亭円朝「怪談乳房榎」 1 奇談としての病 2 人情噺への翻案 第2部 落語と小説のあいだ 第4章 メロドラマの翻案——三遊亭円朝「錦の舞衣」 1 「錦の舞衣」について 2 「錦の舞衣」の概要と先行研究 3 「やまと新聞」の翻案物と「錦の舞衣」 4 「小説」をめぐる言説 5 「悲劇」と「メロドラマ」 6 仇討物によるジャンルの翻訳 第5章 小説を落語にする——三遊亭円遊「素人洋食」 1 「素人洋食」の評価と原作の存在 2 二つの「素人洋食」 3 長屋噺への変更 4 「士族の商法」「素人鰻」との関係 第6章 講談・落語・小説の境界——快楽亭ブラック「英国実話 孤児」 1 実話としての落語 2 快楽亭ブラックの西洋人情噺 3 様式としての実話 4 講談と落語のあいだ 5 小説との関わり 第7章 落語を「小説」化する——談洲楼燕枝「西海屋騒動」 1 「西海屋騒動」について 2 初代談洲楼燕枝と「小説」 3 翻案としての「西海屋騒動」 4 落語を「小説」化する 5 燕枝による「小説」の変容 第3部 「人情」と言文一致 第8章 翻訳と言文一致との接点 1 明治初期の「豪傑訳」 2 逐語訳による翻訳 3 アダプテーションとしての「豪傑訳」 4 文体としての言文一致体 5 翻訳と言文一致との接点 第9章 『源氏物語』と坪内逍遥の「人情」論 1 「世態」の反映としての『源氏物語』 2 英語圏の「小説」観との差異 3 『小説神髄』と『源氏物語玉の小櫛』との関係 第10章 キャラクターからの離脱——坪内逍遥『小説神髄』「小説の裨益」「主人公の設置」 1 円朝と日本の近代文学 2 「人情(ルビ:にんじやう)」論と『倍因氏 心理新説』 3 キャラクターからの離脱 4 逍遥による円朝の評価 主要参考文献一覧 初出一覧 おわりに 人名索引 事項索引
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クィアする現代日本文学 ケア・動物・語り
¥3,300
SOLD OUT
武内佳代『クィアする現代日本文学 ケア・動物・語り』 以下、版元より 紹介 金井美恵子、村上春樹、田辺聖子、松浦理英子、多和田葉子の作品を、クィア批評や批評理論を縦横に組み合わせて読み解く。読者のアイデンティティをも揺さぶる「現代小説を読むことの可能性」を、小説表現とクィア批評の往還からあざやかに描き出す。 解説 小説を読むとは、どのような行為なのか。現代の小説は私たちに何を語りかけるのか。 本書では、金井美恵子、村上春樹、田辺聖子、松浦理英子、多和田葉子という5人の作家が1970年代から2010年代にかけて描き出した7つの小説に着目する。これらの小説を、アイデンティティのあり方を多様に読み替え/書き換えていくクィア批評と、動物やケアなどをめぐる批評理論を縦横に組み合わせて読み解き、小説に内在する多様性や小説固有の強度を浮かび上がらせる。 既存の社会秩序や異性愛主義的な社会構造を揺さぶり、読者の主体性やジェンダー/セクシュアリティをめぐるアイデンティティをも変容させていく「現代小説を読むことの可能性」を、小説表現とクィア批評の往還からあざやかに描き出す。現代の小説をふたたび読み返したくなる、「クィアする」文学論。 目次 はじめに 第1章 金井美恵子「兎」——クィアとしての語り 1 危うい近親相姦願望 2 肉食と殺害に惑溺する少女 3 過剰な模倣のゆくえ 4 「少女」の物語から「私」の物語へ 第2章 村上春樹『ノルウェイの森』——語り/騙りの力 1 男同士の絆と女同士の絆 2 31と13 3 語る/騙る女 4 語られた/騙られた死 5 女性の欲望を読み直す 第3章 村上春樹「レキシントンの幽霊」——可能性としてのエイズ文学 1 不可解な孤独 2 眠りのあとで 3 パーティーに参加しない「僕」 4 記録と距離 第4章 村上春樹「七番目の男」——トラウマを語る男 1 「K」と「私」 2 男性性(ルビ:マスキュリニティ)の呪縛 3 「波」の出来事 4 トラウマの語り 5 「私たち」のセラピー的空間 第5章 田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」——ケアの倫理と読むことの倫理 1 ケアの倫理という思考方法 2 潜在化するニーズ 3 女性障害者の困難 4 ケアの倫理と読みの倫理 第6章 松浦理英子『犬身』——クィア、もしくは偽物の犬 1 ケアされる/ケアする犬 2 犬という伴侶種 3 被傷性とケアの倫理 4 クィアな身体 5 不穏なる暴力の気配 第7章 多和田葉子「献灯使」——未来主義の彼方へ 1 障害者的身体をめぐって 2 クィアな身体と反再生産的未来主義 3 献灯使という子ども騙し 4 可能性としてのケア おわりに 初出一覧 あとがき 人名索引 事項索引