山本ぽてと『ぽてと元年』
装画 直江あき
デザイン ながさわ
校正 蜂谷希一
「山本ぽてと」という変わった名前(ペンネーム?)に出会ったのは、たぶんTwitterだと思う。私の好きな学術出版系のアカウントや研究者がその仕事ぶりを褒めていて、きっと腕利きのライターなのだろう、とチェックを始めたように記憶している。
岩波新書編集部のウェブメディア「B面の岩波新書」では「在野に学問あり」という連載をされていて、在野の研究者に取材し、その魅力を引き出している。
https://www.iwanamishinsho80.com/post/zaiya0
この本も、クーチェキというウェブメディアでの連載と、ご自身のブログPOTEXITを元にしてできている。
妙に素直で、ぼんやりしていて、時々おかしな出来事やむかつく人に出会ったり、懲りずに人を好きになったり。登場人物(エッセイだから周りの人々、などが正しいのだろうが、私は妙にフィクションを読んでいるような感触がするのだった)はギャルで神童で運動音痴だった過去を持つ人や、小さな声でぽてと氏、ぽてと氏、と呼びかける人など様々だけれど、それぞれ短い紹介しかないはずなのに、なぜか私の中ではもう知り合いかのような感覚だ。勝手に知り合いと思われていたら気味が悪いだろうけれど。
これだけ書いておいて全然違うことを言うようだが、山本さんや周りの人々のキャラクターによって読ませる、というよりは、「こう書いたらどう読まれるか」がよく分かっているからこそできる端的な描写と、それが見えなくなるくらい私的な視点というものが魅力なのだと思う。
以下、著者より
那覇空港に穴が空き、飛行機に閉じ込められる。知らない人の法事に参加する。引っ越しをした矢先に財布をなくす。父が選挙に落ちる。春節の日に河原で爆竹を鳴らす。日常をぼんやりと綴ったエッセイ集です。